問い合わせ対応、導入フェーズの進行、契約後のモニタリング。CRE(Customer Reliability Engineering)の仕事のゴールは、対応をさばくことではなく、顧客が PLAY CLOUD を使い続けたくなる状態をつくることです。ソリューション技術部が、待ちのサポートから先回りのサポートへ転換するために内製したツール「NITTY」の話です。

CREの仕事のゴール

顧客の導入とサポートを支える CRE の仕事は範囲が広い。問い合わせ対応、導入フェーズの進行、契約後のモニタリング。ただ、どれも顧客がプロダクトで成果を出し、使い続けてくれて初めて意味のある仕事です。

私たちのゴールは、対応件数をさばくことではありません。自社の映像配信プラットフォーム PLAY CLOUD が顧客に選ばれ続けること、いわゆる LTV(顧客生涯価値)の向上です。ところが実際のサポートは、問い合わせが来てから動く「待ちのサポート」になりがちでした。

何が課題だったのか

  • 顧客の異変に気づくのは、問い合わせが来た後だった。問い合わせすら来ない静かな利用離れ(サイレントチャーン)には、解約の連絡が来るまで気づけない
  • 対応の進捗が顧客側から見えず、「あの件どうなりましたか」という確認の連絡をさせてしまっていた
  • チケット、導入フェーズ、顧客の利用状況が別々の場所で管理され、転記と状況確認に時間が消える。顧客への提案や対話に使う時間が残らない

必要だったのは新しい管理項目ではなく、散らばった情報を集約して、危険な兆候を顧客より先にこちらが知ることでした。

つくったもの: NITTY

NITTY は、サポート・導入・モニタリングを横断し、顧客より先に動くための情報を一画面にまとめる社内ツールです。

NITTYのダッシュボード画面(サンプルデータ)
「今日の対応事項」を集約したダッシュボード。SLA超過のチケットと要注意の顧客をひと目で把握(表示データはサンプル)
  • ダッシュボード … 未対応チケット・顧客からの新着・要注意の顧客・要フォローの導入を集約。今日どの顧客に動くべきかを、朝いちばんに開く一画面で判断できる
  • チケット管理 … デモフェーズ/導入フェーズ/サポート(TAM) をフェーズ別に管理し、SLA超過を強調表示
  • 会社・プロジェクト … プロジェクト一覧と会社情報を一元管理
  • モニタリング … 顧客ごとのヘルススコアを毎日更新し、基準割れや利用離れの兆候を検知
NITTYのチケットカンバン画面(サンプルデータ)
導入フェーズのチケットカンバン。ステータス別に担当・優先度を横断で把握(表示データはサンプル)
NITTYのプロジェクト一覧画面(サンプルデータ)
プロジェクトのフェーズ・進捗・担当を一覧で管理(表示データはサンプル)

問い合わせが来る前に気づく仕組み

中核はヘルススコアです。PLAY CLOUD の利用データを毎日自動で取り込み、3つの軸でスコア化しています。

  • 利用量 … 再生数や配信量などのトラフィック。契約上限に近づいたら、プラン見直しを提案するタイミング
  • 機能定着 … 主要機能が使われ続けているか。利用離れの早期検知
  • サポート依存度 … 問い合わせの頻度と解決までの時間。多ければ使いにくさのサイン、ゼロならサイレントチャーンの疑い

問い合わせがゼロの顧客ほど危ないかもしれない、というのがこの仕組みの面白いところです。順調なのか、静かに離れていっているのか。データがなければ区別がつきません。

NITTYのモニタリング画面(サンプルデータ)
顧客ごとのヘルススコアと兆候の判定。チャーン懸念・アップセル候補を色分け表示(表示データはサンプル)

なお、スコアの重み付けは現在チューニング中です。まずは一部顧客での試験運用から始める予定です。

顧客と同じデータを見る

先回りだけでなく、顧客から見える景色も変えていきます。

  • 顧客ポータル … 問い合わせの進捗をステッパーで表示。「あの件どうなりましたか」の確認連絡そのものが要らなくなる
  • ヒアリングフォーム … 導入時のヒアリングは、Excelシートのメール往復をやめて AI 会話型の Web フォームに。提案書や仕様書を添付すると、AI が内容を読み取って回答を事前入力する

CRE と顧客が同じデータを見ることで、認識のズレや手戻りをその場で解消できます。

顧客ポータルのお問い合わせ詳細画面(サンプルデータ)
顧客ポータルのお問い合わせ詳細。対応状況をステッパーでいつでも確認できる(表示データはサンプル)
AI会話型ヒアリングフォームの画面(サンプルデータ)
AI会話型ヒアリングフォーム。会話の回答が左の入力予定シートにも反映される(表示データはサンプル)

AIをどう使ったか

プロダクトの中と、開発の進め方の両方で使っています。

プロダクトの中で

  • ヒアリングフォームで、添付資料から AI が回答を事前入力
  • 問い合わせへの一次返信を AI が下書き。必ず人が内容を確認し、承認してから返信する運用で、AI が顧客へ自動返信することはありません
  • 複数の論点が混ざった問い合わせを、AI が論点ごとに子チケットへ分解

開発の進め方で

  • 実装は Claude Code を前提に内製。仕様のヒアリングからドキュメント生成、実装、PR 作成までを標準フロー化し、少人数でも開発を回せる体制にした
  • 毎日15分から1時間、業務知識を持ったメンバーに実際の画面を見せて、フィードバックや改善案をもらいながら改善サイクルを回した

もっとも、順調な話ばかりではありません。スケジュールは当初の想定から遅れました。AI で実装が速くなっても、何をつくるべきかを見極める時間までは短くならない、というのが正直な実感です。

成果

成果を語るのは、まだこれからです。まもなく運用を開始する予定で、効果はその中で確かめていきます。NITTY で目指している変化は次のとおり。

指標 これまで 目指す状態
顧客の異変への気づき 問い合わせが来てから 利用データの予兆で先回り
起票・社内共有の手作業 約20分/件 自動起票でゼロ
進捗の見え方 顧客が問い合わせて確認 ポータルでいつでも自己確認
顧客に向き合う時間 転記・確認作業に消える 提案・対話へ

これから

ヘルススコアの精度を上げ、定期レビュー(QBR)を通じて、顧客の活用が広がる提案につなげていきます。問い合わせの窓口ではなく、顧客の成果に踏み込むパートナーへ。

まずは STREAKS から運用を始める予定です。ここで確立した型を、GALLERY や KRONOS DRIVE を含む PLAY CLOUD 全体へ広げていく計画です。

※ 本記事はPLAI立ち上げ時のサンプル記事です。掲載内容・数値は 構成確認用のドラフトであり、実際の取り組みに合わせて編集してください。